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「おっさん臭さ」が、なくなってしまった。
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最近、街中で新型クラウン・シリーズが目に付くようになった。
目にするたびに思うのは、
「一昔前の、マークⅡクラスの車格になったなあ」ということだ。
つまり、若々しい感じのクルマになったわけだ。
したがって、トヨタの意図した『若がえり策』は成功した、ともいえる。
しかし、それが販売に結びつくかは難しいと考える。
なぜならクラウンを買いたい人は、、
「オッサンくさい、図々しさ」
「軽快感とは無縁の重量感」
こういうものを発散させている車に乗りたいからクラウンを買うのである。
先代のゼロ・クラウン。特にアスリートシリーズは、
「中年の一歩手前の、青年おっさん(?)」な感じだった。
ダーティーでクールな感じ。
この辺のサジ加減が本当に絶妙だったと思う。
こういうものが好きな人には、たまらない魅力があったとのではないか。
ひるがえって、今回の新型アスリート。
ちょっと「ひ弱」な感じがする。
先代が、筋肉質の頼もしい寿司屋の大将だとすると、
新型は、市役所の事務員(係長クラス)。こんなイメージかな。
その原因は四つ。
◆一番は、グリルだ。
形状が、逆三角形に近い鋭角な形状を与えたこと。
大きさが、全貌投影面積に比べて小さくなったこと。
◆二番目は、フロントタイヤを囲むタイヤフェンダーだ。
全体のプロポーションを崩すうえに、あまりに唐突感がある。
この辺は、マツダ系のデザイナーの方が圧倒的に上手い。
◆三番目は、サイド下部の後方に向かって切れ上がっていく処理。
これが子供っぽさを増幅している。
◆四番目は、ホイールデザイン。
先代の重厚感はホイールデザインに負うところが大きかった。
今回のは、神経質っぽさを醸し出してしまっている。
以上の点から新型は、従来のお客の買い替えを促さないと考えられる。
これが、販売に結びつくかは難しい、と上で述べた理由である。
デザイン評価… 星なし (★三つが満点)
先代のゼロ・クラウンは、歴代屈指の大成功の販売を収めた。
なんと月販平均4980台、だったそうである。
中でも、アスリート・シリーズが4割弱だったというのだから、
アスリート・シリーズは完全に認知されたことになる。
ベンツのアバンギャルド・シリーズみたいなものか。
今回の新型アスリートが思ったように売れなかったら、
「ガソリン高のご時勢だからねえ」と開発者は言い訳するに違いない。
しかし、それは違う。
デザインが若々しくなったから売れなかったのだ、と断言しよう。